災害・防災学ー風水害1 災害統計を見るときの注意点
前回
風水害
「自然災害」の1つ。強風、大雨、および高潮、波浪により起こる災害の総称(気象庁)。多くの場合、風と雨は一緒に起こる。
大雨・豪雨ー災害が発生する可能性のある雨。(大雨と豪雨の明確は違いはなく、降雨量の定義もない。)
地震による犠牲者は毎年いないが、風水害の犠牲者は毎年いる。→身近、リスクが高い災害と考えられる。
事例
①2019年台風19号 死者・行方不明者87人(直接死のみ)(消防庁)
洪水で家が流された家屋は限定的だが、流されていない家屋の屋内で浸水でなくなっているケースが多い。
もう一つ特徴的だったのが、自動車移動中の被災(27人)。25人は水関連で亡くなった。
浸水想定区域内での犠牲者発生が7割。「想定外」の場所で多く被災しているわけではない。
②平成30年(2018年)7月豪雨 死者・行方不明者230人(直接死のみ)(消防庁)
広域で土砂災害(犠牲者に5割)、洪水災害(犠牲者の4割)があった。
岡山県の真備町では51人が屋内で死亡しているが、家屋が流されたのは3か所。
深い浸水(5m)があったが国土交通省のハザードマップでは5m以上の浸水が想定されており、「想定外」ではなかった。
③平成29年(2017年)7月九州北豪雨 死者・行方不明者43人(直接死のみ)(消防庁)
山地河川の洪水(=深さがあり流速が早い=押し流す力が強い)の被害。川の位置が変わってしまうような山地河川の洪水では家屋が流される。
④2016年台風10号 死者・行方不明者27人(直接死のみ)(消防庁)
主に山地河川の洪水。
⑤平成27年(2015年)9月関東・東北豪雨 死者・行方不明者8人(直接死のみ)(消防庁)
広域な平野部の河川洪水(堤防氾濫)。数千規模での家屋の浸水があった。
⑥平成26年(2014年)8月豪雨 死者・行方不明者74人(直接死のみ)(消防庁)
土砂災害が広島市の八木という地域の狭い範囲で土砂災害が生じ、死者74人が亡くなった。
⑦昭和57年(1982年)7月豪雨 死者・行方不明者330人(直接死のみ)(消防庁)
⑧昭和47年(1972年)7月豪雨 死者・行方不明者458人(直接死のみ)(消防庁)
1回目の斜面崩壊で生き埋めになった人を助けるために救助に入った人を2回目の斜面崩壊が襲い、二次被害によって多くの犠牲者が出た。
災害の統計を見るときの注意
災害の統計を見るときには
・災害統計は時間とともに変化する
・統計にカウントされる基準は時代とともに変化する
ということに留意する必要がある。
例として以下をみてもらいたい。
令和元年8月27日からの大雨の建物被害の報告数について消防庁の発表情報を時系列に追っていくと以下のような報告の推移となっていた。
災害発生から1カ月近く経つと床上浸水が減り、半壊の報告数が多くなっていくことから、床上浸水から半壊へ判定が変更されるようだということが分かる。
出典:消防庁
令和3年5月時点の水害における被害基準はこちら
http://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/r303shishin_3.pdf
また、全壊か半壊かの基準が時代とともに変更され(近年は基準を低くする傾向にある)ため、過去の災害と被害規模を比較するには、床上浸水以上の被害の総計値で比較する必要がある。こうした統計上の基準が変遷していることは一般に知られていないことであり、特に留意が必要。
これは、死者・行方不明者についても同様のことがいえ、災害発生の1カ月以降からは行方不明者が減り、死者・行方不明者の総計も減少する傾向がある。